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最高裁判所第二小法廷 昭和40年(あ)611号 判決 1965年9月10日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人向江璋悦、同安西義明の上告趣意第一点について。

所論は、判例違反をいうけれども、所論引用の判例は本件と事案を異にし適切でないから、所論は適法な上告理由に当らない。(被告人の本件所為中、法定外選挙運動文書の頒布は単純一罪を、各供与申込は被申込人ごとに一罪を構成し、頒布罪と供与申込罪とは一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四一条一項前段により、結局全部一罪として処断すべき場合に該当し、この点に関する第一、二審の判示は正当である。)

同第二点ないし第四点について。《略》

弁護人藤田八郎、同入山実の上告趣意について。

所論に鑑み調査するに、原裁判所は、弁護人向江璋悦外二名の控訴趣意第三点についての判断を省略し、同第二点及び第四点の論旨を容れて第一審判決を破棄し、更に自判するに際し、たんに第一審判決の認定した事実に法令を適用していることは、原判文上明らかである。しかし右控訴趣意第三点は、第一審判決の証拠説明中「関係部分」「関係調書」の表示ではいかなる証拠を指しているのか不明であって、第一審判決には理由不備または訴訟手続についての法令違反があるとの主張であるから、原裁判所としては右主張に判断を加え、その理由がなければ第一審判決の確定した事実に法令を適用すれば足り、その理由があればあらたに自ら事実を認定して法令を適用すべきであったのである。原裁判所がかような措置を採ることなく、右主張に対する判断を省略したのは、判断を遺脱した違法があり、ひいては論旨引用の判例の趣旨に反するものとせねばならない。しかし、第一審判決の判文と記録とを対照すれば、右判決の証拠説明中「関係部分」「関係調書」の表示が、具体的にいかなる証拠を指すかは明白に認められるのであるから、原判決のこの点に関する違法は判決に影響を及ぼさないことが明らかであって、結局論旨は採用しがたい。

また記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

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